「もう明日から行きたくない」「連絡せずに辞めたら、どうなるんだろう」——パチンコ店のバイトを飛ぼうとしている人が知りたいのは、たぶんこの2つです。働いた分の給料はもらえるのか。損害賠償を請求されないか。ボクは元店長として、実際に飛ばれた側を13年やってきました。店の中で何が起きるかを、包み隠さず書きます。先に結論です。給料は必ずもらえます。損害賠償が実際に来ることは、まずありません。ただし店からの連絡は確実に来ますし、飛ぶより早くてラクな方法があります。
結論:働いた分の給料は、飛んでも支払われる
労働基準法第24条で、賃金は全額を労働者に支払わなければならないと決まっています。これは「無断欠勤したら減額していい」という例外を作っていません。1日でも働いていれば、その分の給料を受け取る権利があります。
「バックレたら給料は払わない」と言う店長が、いないとは言いません。ボクも同業者からそういう発言を聞いたことはあります。でもそれは単純に違法です。給料日になっても振り込まれない場合は、労働基準監督署に相談すれば動いてくれます。店側もそれは分かっているので、ほとんどの店は普通に振り込みます。
ただし注意点が1つ。手渡しの店だと、取りに行かないともらえません。振込ではなく現金手渡しの運用をしている店は今も残っています。飛んだあとに店へ受け取りに行くのは気まずいので、これは事前に確認しておく価値があります。
店側は実際どう動くか(元店長の実務)
飛ばれた側の動きを、時系列で書きます。想像しているより、ずっと事務的です。
- 当日:シフトに穴が空くので、まず社員が電話します。出なければ2〜3回。ここで一番困っているのは、実は店長ではなくその日一緒に入っていたスタッフです。人数が足りないまま回すことになります。
- 2〜3日目:電話がつながらなければ、緊急連絡先(履歴書に書いた実家など)に連絡します。ここで親に電話がいくのが、飛んだ人にとって一番きついパターンです。
- 1週間程度:連絡が取れなければ、店は「退職の意思あり」とみなして手続きに入ります。シフト表から名前を消し、代わりの募集をかけます。
- その後:制服・ロッカーの鍵・名札の返却、給与の精算、離職票や源泉徴収票の発行。ここは事務作業です。
正直に言うと、店は追いかけてきません。自宅に押しかけることもありません。人手が足りない中で、辞めた人を追いかけている余裕がないからです。ボクが店長だったとき、飛ばれて最初にやっていたのは「今日の夜のシフトをどう埋めるか」の電話でした。
損害賠償は「請求される可能性はあるが、実際には来ない」
ここは正確に書きます。理論上は可能です。無断欠勤は労働契約の債務不履行にあたるので、それによって会社に損害が生じた場合、損害賠償を請求する余地はあります。
ただし現実には、ほぼ起きません。理由は立証の壁です。会社側は「どんな損害が、いくら発生したのか」「それがあなたの無断欠勤とどう因果関係があるのか」を具体的に証明しなければなりません。アルバイト1人が1日休んだことによる損害額を裁判所に示すのは、現実的に非常に難しい。
そして、そこまでやる費用対効果がありません。弁護士に依頼するコストの方が高くつきます。「損害賠償を請求する」と店長に言われたとしたら、それは9割方おどしです。ただし、店の金銭や景品に関わる問題を起こしたまま消えた場合は話が別です。それは無断欠勤ではなく、別の問題として扱われます。
懲戒解雇になるのか
アルバイトで数回の無断欠勤を理由に懲戒解雇にするのは、不当解雇と判断されるリスクがあるため、実務ではあまりやりません。多くの店は「自己都合退職」として処理します。その方が事務が早いからです。
気にする人が多いのは「次の就職に響くか」ですが、退職理由が次の会社に自動的に伝わる仕組みはありません。離職票には離職理由が書かれますが、それを見るのはハローワークです。ただし同じ企業グループの別店舗に応募すると、社内で履歴が残っているので分かります。パチンコ業界は同一グループで複数店舗を持っている会社が多いので、そこだけは注意してください。
なぜパチンコ店は「飛ばれやすい」のか
店側の立場で言えば、飛ばれるのには理由があります。ボクが見てきた限り、集中するタイミングは決まっています。
- 入って2週間〜1か月:インカムの指示が聞き取れない、覚えることが多すぎる、という段階。ここが一番飛ばれます。
- 初めて強いクレームを受けた直後:出玉の理不尽な言いがかりを1人で受けた日の夜に、連絡が来なくなるパターン。
- シフトを増やされた直後:人が足りない店ほど、新人に無理なシフトを入れます。そして辞められて、さらに足りなくなる。
これは本人の根性の問題ではなく、店の育成体制と人員配置の問題であることが多いです。同じ人が、別の店では普通に何年も続いたりします。
飛ぶ前に、これだけは考えてほしい
ボクは「飛ぶな」と説教をするつもりはありません。ただ、飛ぶとあなた自身が損をする部分があるので、そこだけ書いておきます。
- 制服とロッカーの荷物が残る:取りに行くのが、日が経つほど気まずくなります。
- 源泉徴収票が必要になる:次のバイト先や確定申告で使います。連絡を絶っていると、もらうために結局こちらから電話することになります。
- 緊急連絡先に電話がいく:実家の親に「お子さんが来ていないのですが」と連絡が入ります。飛んだ理由を自分の口で説明する羽目になります。
要するに、飛んでも「完全に終わり」にはならないんです。どこかで一度は連絡を取ることになる。だったら、その一度を先に済ませてしまった方がラクです。
言い出せないだけなら、退職代行という手がある
「辞めたい」と言えないから飛ぶ、という人が一番多い。引き止められるのが怖い、店長の顔を見たくない、電話をかける勇気が出ない。これは根性の問題ではなく、言い出す場面そのものを他人に任せれば解決する話です。
退職代行を使えば、あなたが店に電話をかける必要はありません。業者が退職の意思を伝え、制服の返却方法や、離職票・源泉徴収票の送付についても話をつけてくれます。飛ぶのと違って、給料も書類も普通に処理されます。費用はかかりますが、「気まずさに耐える」「親に連絡がいく」というコストを考えれば、選択肢として十分ありです。
もちろん、自分で伝えられるならその方が安くつきます。その場合の切り出し方は退職を切り出すタイミングと伝え方の記事にまとめてあります。
実際に飛ばれたあと、その人たちがどうなったか
13年やっていると、飛んだ人のその後を知る機会もあります。特徴的だった3パターンを書きます。個人が特定されないように細部は変えていますが、起きたことはそのままです。
- 2週間後に本人から電話が来たケース:「すみませんでした」と言って、制服を返しに来ました。店としては辞めた人が1人増えただけなので、責める理由がありません。普通に給料を渡して終わりです。気まずいのは最初の10秒だけで、事務手続きは5分で終わります。
- 親から電話が来たケース:緊急連絡先に連絡した翌日、母親から「本人が行きたくないと言っている」と電話がありました。この場合も、退職として処理して終わりです。ただし本人にとっては、家庭内で説明する手間が増えただけでした。
- 数か月後、系列の別店舗に応募してきたケース:これは気づきます。同じ会社なので名前が残っています。悪意を持って落とすわけではないのですが、面接で「以前うちの◯◯店にいましたよね」と確認されます。説明できる状態にしておかないと苦しいのはこのパターンだけです。
共通して言えるのは、店側は怒っていないということです。人が入れ替わるのが前提の業界なので、1人辞めたことに感情を使いません。飛んだ本人が思っているほど、店は本人のことを考えていません。これは冷たいようですが、飛ぼうとしている人にとっては救いになる事実だと思います。
「今日から行かない」と決めた日にやること
もう心が決まっているなら、被害を最小にする順番だけ書いておきます。
- 1. 給料の受け取り方法を確認する:振込か手渡しか。手渡しなら、いつ・誰に受け取りに行くかを決めておく。
- 2. ロッカーの私物を回収する:シフトが薄い時間帯(平日の午前中など)なら、顔を合わせる人数が少なくて済みます。
- 3. 制服の返却方法を決める:郵送でいいと言う店がほとんどです。クリーニングして送れば、それ以上何も言われません。
- 4. 一言だけ連絡を入れる:電話でなくてもいい。「体調と生活の都合で続けられません。申し訳ありません」だけで、緊急連絡先への電話は止まります。
この4つをやるだけで、「飛んだ」ではなく「辞めた」になります。かかる時間は合計10分程度です。
よくある質問
Q. LINEやメールで「辞めます」と送るだけでもいい?
A. 法的には退職の意思表示として有効です。無断で消えるよりはるかにマシで、給料も書類も普通に処理されます。ただし「読んでいない」と言われないよう、電話がつながらなければ記録の残る方法で送ってください。
Q. 辞めると言ってから何日で辞められる?
A. 期間の定めのない雇用なら、民法上は申し入れから2週間で終了します。「1か月前に言え」という就業規則があっても、2週間で辞めること自体は可能です。
Q. 制服を返さないとどうなる?
A. 返却を求める連絡が来ます。クリーニング代や実費を請求されるケースはありますが、給料から勝手に天引きすることは原則できません。
次の職場を選び直すなら、同じ失敗を繰り返さないこと
飛びたくなるほどきつかったのなら、問題はあなたではなくその店の人員体制と育成体制だった可能性が高いです。同じ条件の店をまた選べば、同じことが起きます。
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